小説「クリムゾンの迷宮」のあらすじと感想【ネタバレ注意】
- 作成日:2018/05/20
貴志祐介さんの小説「クリムゾンの迷宮」のあらすじと感想です。 感想ではネタバレを含むのでご注意ください。
あらすじ
やつらが来る。あれは人間じゃない。逃げなければ・・・この火星のような迷宮で。
日本ではないどこか別の惑星なのではと錯覚するほどの紅の絶景。 主人公はなぜ自分がこのような場所にいるのか記憶にない。 ここは一体どこだろう・・
物語は見ず知らずの台地に迷い込んだ主人公視点で始まります。 迷い込んだのは主人公だけでなく男女合わせて9名。 しかも全員この場所に見覚えがないといいます。
そんな中、この場所にそぐわないゲーム機のようなものがあり、 それを起動させてみると、9人でゲームをするという内容が。
ゲーム内容はこの迷路のような台地で、ある地点を目指して進んでいくという単純なものですが・・・
感想
ここからはネタバレを含むのでご注意ください。
鬼役としてグールになった二人
やはりこの2人が印象深いです。追う者と化した2人の変貌ぶりで、挿絵がなくても その風貌がよくわかります。
黒幕の意図した通り、食料をとりに行った人がこのゲームの鬼の役になってしまいましたが、 人間が追いかける側になるとは思いませんでした。
迷宮に化け物がでてきて、それから逃げ回る小説かと思っていましたが、 既に招集された人間がグールになるとは・・・。良い意味で期待を裏切ってくれましたね。
登場人物について
勇者様と魔法使いなどのような非現実的な人はいなく、至って現実的な男女が登場します。 年齢層は比較的高めで、人間の本性を描くような描写も多いです。
悪い言い方をすれば、ほとんどの登場人物が汚く、誰かを蹴落とすことばかりを考えている印象が強かったです。 さすがに主人公とヒロインは他の人たちよりマシでしたが。綺麗ごとだけではゲームに勝ち残れないのかもしれませんね。
バラエティ番組顔負けの食事シーン
最初は食料が与えられたのでそれほどでもなかったのですが、 物語が進むにつれて食料不足が深刻になっていきます。
よって、最終的にはバラエティー番組のゲテモノ食いがかわいく見えるような食事シーンが何度かありました。 私たちの現在の食事がいかに幸福なのか身に染みます。
好き嫌いをしている状況ではないにしろ、女性まで進んでゲテモノを食すあたりが、 どれだけ食料が重要なのかを教えてくれますね。
ラストは「戦いはこれから」という結末
主人公はゲームに見事勝ち残りお金を手にするのですが、まあ割に合わない金額でしょうね。 これだけのゲームであれば一生働かなくて良い金額は欲しいところです。
そして苦楽を共にしたヒロインの存在は謎のままで、ゲーム中に明かした職業や名前は偽りだったようですね。
主人公はゲーム主催者がどこの誰だかつきとめるべく動きだすことで物語は幕を閉じます。 ただ、大抵の人はこんなこと2度と関わりたくないのと、どんな危険があるのかわからないというので、主人公と同じ行動はとらない気がします。
でも黒幕がわからないと「いつかまたこんな危険なゲームに参加させられるのでは?」という不安もありますね。 ライアーゲームのように、ビデオテープが急に送られてきたりして・・・。
最後に
全体を通して衝撃的な印象が多い小説でした。 最後が万事解決といかないため、少しもやっとした感じが残るのも特徴でしょうか。
そして、良いところも悪いところも含めて、人間の本性を描く内容でした。 そして一番頭に残っているのは鬼役になった人間二人の描写です。
全ての作品を読んだわけではないのですが、この作者の作品はこの手のぞっとするような描写が結構あるみたいですね。 ちなみに漫画にもなっています。
描写が気になる方は漫画版が良いかもしれませんね。