小説「3日間の幸福」のあらすじと感想【ネタバレ注意】
- 作成日:2018/03/03
- 更新日:2018/08/22
三秋縋さんの小説「3日間の幸福」のあらすじと感想です。 感想ではネタバレを含むのでご注意ください。
あらすじ
もし自分の寿命がいつ終わるのか知っていたら、あなたはどのように過ごしますか?
主人公は「クスノキ」という名の男子大学生です。 自分は他の人とは違い優秀な大人になると思っていた子供時代。 しかし、20歳になった自分はどうやらそうではない模様。
人生に活路を見いだせず、さらにお金に困った主人公は自分の寿命を売ることで物語が始まります。 ある条件を満たすと寿命を売った人に監視員がつくのですが、 その監視員が本作品のヒロイン「ミヤギ」です。
自分の部屋に仕事とはいえ同じくらいの年齢の女性がいる奇妙な共同生活。 そして、寿命を売ったことで得たお金と残り時間。
主人公はとある理由から残りの人生を価値のあるものにしようと試みるが果たして・・・
感想
ここからはネタバレを含むのでご注意ください。
最初に思ったこと
まず読み終えて少し切ない物語だなと感じました。 ハッピーエンドといえばそうかもしれませんが、結果的には主人公とヒロインは若くしてその人生を終えることになりました。
お互いの想いが結ばれ、「普通の恋人」になったけれど寿命が残り3日間。 しかし、両想いになって幸せの絶頂であろう時期の3日間は、まさに二人にとっては最高の時間だったでしょう。
一番良いところで終わることができた。という意味では、最後の瞬間は誰よりも幸せに人生を終えることができたと思います。
人物について
小説のクスノキとミヤギについてですが、最初ミヤギはクスノキに対して仕事上の接し方をしていましたね。 当たり前といえば当たり前ですが、クスノキに対してどこか棘がある言い方が多くクールに言葉を交わしていました。
しかし、物語が進むにつれクスノキがミヤギに対して普通の女の子のように接していくことで、ミヤギの態度に変化が訪れます。 最終的には「あなたは本当にミヤギさんですか?」というレベルまで心を許します。 いわゆる「ツンデレ」というやつですね。
ただ、それでも最後まで丁寧語を崩さずにクスノキと接しています(最後の3日間はわかりませんが)。
クスノキとミヤギが寿命を売ったことについて
冷静に考えれば、例え寿命を売れたとしても、それを売ることはお世辞にも賢い判断とはいえないでしょう。 ミヤギに至っては残りの人生を全て捨てて、クスノキと3日間だけ一緒に過ごすことを選んでいます。
若さゆえの行動とも言えなくはないですが、いざ当事者になってみるとこれは不思議な決断ではないように思います。 自分がクスノキやミヤギの立場だったら・・と考えると、彼らの行動に共感できる方も多いのではないでしょうか。
実際にあった悲しいニュースとは逆の結果
私はこの小説の結末を知った後、あるニュースを思い出しました。 長い間夫婦として生活してきた夫が、生活苦ゆえに認知症の妻を手にかけてしまったニュースです。 その後、夫は一切食事をとらず人生を終えました。 長い夫婦生活は幸せだったと思われますが、最後の最後に残念な結果となってしまったのです。
最後が幸せなほうが良いのか、最後が不幸でもそれまでの長い時間が幸せなのが良いのか。 これは「答えのない問い」という類のもので、人により解釈が異なるのでしょうね。
最後に
なんか色々うまくいかないな~と思っている時ほど、けっこうくるものがある小説だと思います。 恋愛もそうですが、人生についても少し考えさせられる物語でした。
個人的には、この小説は非常に面白く、心に残る物語でした。 ちなみに、漫画にもなっています。