小説「出口なし」のあらすじと感想【ネタバレ注意】
- 作成日:2018/09/16
藤ダリオさんの小説「出口なし」のあらすじと感想です。 感想ではネタバレを含むのでご注意ください。
あらすじ
他人を信じるのは幸か不幸か。生き残りをかけた知略ゲーム
専門学校生の主人公と大学生のヒロインを含む見ず知らずの男女数人。 彼らが何者かに脱出不可能な空間に閉じ込められた状態で物語が始まります。
犯人は主人公たちに「勝たなければ命の保証はないゲーム」を強制します。 力を合わせれば難しいゲームではないのですが、お互いが騙しあえば・・・。
罰ゲームで次々に人生を終える人々と、それをあざ笑うかのような黒幕の演出。 主人公たちはイラ立ち・絶望を感じながらも、ゲームに勝ち進むために奮闘します。
感想
ここからはネタバレを含むのでご注意ください。
最初に思ったこと
黒幕についてほとんど解明しなかったので少々モヤモヤを感じつつ、 物語は非常に読みやすかったです。 難しい表現はほぼないので、小説初心者でもスラスラ読めるかと思います。
読んでて面白かったのは「チーム4の敗北」ですかね。 あれだけ自信満々でふざけていたのが1回戦であっけなく敗退。 勝負すらさせてもらえませんでした。
チーム4ざまぁ(笑)と思った読者も多いでしょう。
人物について
少し頼りない主人公「小野寺裕太」と強気な冷徹ヒロイン「川瀬由紀」を中心に、様々な年代の男女が登場します。
このような生存をかけたサバイバルゲームは必ずと言っていいほど「人間の醜さ」が顕著になりますね。 この小説も例外ではなく、他人を蹴落として這い上がる描写がいくつかありました。
他のチームはチャットでしか登場していませんが、そこでも騙しあいのオンパレードです。 チーム内だけでなくチーム外も信じられなくなったら誰も信じられないでしょうね。
ゲーム内容
この物語ではクイズとポーカーの2つのゲームがプレイヤー達に出題されました。 まず最初にクイズに解答。正解するとお題がだされます。解答の選択肢は13個ありますが、 これがポーカーの役に関係してきましたね。
チーム4のように早い段階で次のゲームがポーカーだと知れば優位にたてるのですが、 役が強いだけでは勝てませんでした。チーム4は相当強い役をもっていたと思われますが、 それゆえに油断して酸素を賭ける意味を見落としていたように思えます。
幸か不幸か、主人公の道連れ作戦が思いもよらない結果を生み出したのですが、 チーム4は最初からふざけた態度ではなく手を指し伸ばすようなチャットをしていたら、 道連れにされずに済んだかもしれませんね。まさに自業自得といえます。
犯人
最初から最後まで犯人が誰か明らかになりませんでした。 ゲームマスターが犯人であることは間違いなさそうですが、 一般の人では用意できない「お仕置き」を用意しているので、ヒロインがいうようにかなり大きな危ない組織だと推測できます。
ありがちなパターンだと、「生存をかける人間の醜い姿」を撮影しておき、それを金持ちに売ってビジネスにする組織とったことでしょうか。
お金で何もかも手に入れる富豪達にとって、この手のリアリティあるドラマは魅力的・・という設定の物語をいくつか知っています。 何にせよ悪趣味ですね。
ラストはヒロインが捕まる
最後に犯人を特定しないことを選んだ主人公とは反対に、犯人を捕まえることを選んだヒロインは 黒幕と思われる人達に捕らわれてしまいます。
ここで物語が終わってしまうので不完全燃焼という感じはしますが、 あえて犯人を明かさず正体は読者に任せています。 由紀は今後どうなるのか。。
捕まった由紀がもう一度ゲームをやらされることはないような気がします。 既に「お仕置き中」とメールに記載されていたので、作中にあったようなきついお仕置きが始まるのでしょう。 そうなると由紀は帰ってこれないかもしれません。
最後に
とにかくわかりやすくて読みやすい物語ですが、目立った印象に残るような小説かといわれると、そうでもないです。
小説を読むのが初心者の方や、読みやすい小説を好み「閉じ込められた空間内で、知識を競うサバイバルゲーム」の物語が好きな方にはおすすめです。
逆にこの手の小説に慣れている方は少し物足りないかもしれませんね。