小説「二度めの夏、二度と会えない君」のあらすじと感想【ネタバレ注意】
- 作成日:2018/08/31
赤城 大空さんの小説「二度めの夏、二度と会えない君」のあらすじと感想です。 感想ではネタバレを含むのでご注意ください。
あらすじ
この夏、俺は、君を二度失った。
高校3年の文化祭後、病気で先がないバンド仲間のヒロイン「森山燐」に告白するも、 拒絶され仲直りができないまま永遠の別れになってしまった主人公「篠原智」。
「こんなことなら告白なんてするんじゃなかった。」と気持ちを伝えたことを後悔していた時、 主人公は燐と出会う前にタイムリープをします。
時間が戻った理由はわからないけどやることは一つ。燐を笑顔で見送ること。 最初から別れがくることを知っていても。付き合うことはできないとわかっていても。 智は燐が最後まで笑顔でいられるように、もう一度あの夏をやり直します。
感想
ここからはネタバレを含むのでご注意ください。
結末
智にとっても、燐にとっても悲しい結末だったと思います。 お互い同じ想いであったのにもかかわらず、どちらも言葉にせずに別れていますね。
先がない燐からしてみれば「自分の気持ちを伝えても迷惑になるかも」と一歩踏み出せなかったんでしょう。 智においても過去の拒絶されたトラウマから勇気がだせないでいました。
お互いが結ばれることはありませんでしたが、残った智達は前を向いて歩き、 バンド活動を続けているのが救いでしょうか。
エビローグにおいて、智の歌が「なにかを必死に祈るような、そんな歌声」と表現されているのが 妙に印象深いです。
人物について
常識人の主人公と元気いっぱいのヒロインを軸に、ツンデレ幼馴染に変態イケメン、コミュ障の女性ドラマーが主な登場人物です。
智が燐を好きなのは最初から明白ですが、燐も智に嫉妬している描写がいくつかあります。 普段は男友達のような接し方ですが、時折見せる嫉妬はギャップ萌えというやつでしょうか。
また、会長が敵から味方になる変化も見どころ。初期では深夜ライヴをやる智と燐を「あそこです。深夜に騒いでいる社会のゴミは!」 と警察につきだそうとしていました。
しかし、仲間になってからは智達の演奏をはしゃいで聞くほどになるという身の変わりようです。会長に一体何が・・・
バンド活動
ボーカルの燐とギターの智など、高校生のバンド活動の話がメインですが、音楽経験がなくても楽しめる作品でしたね。
ゼロからバンドを作っていくというのは「THE 青春」といったところでしょうか。 さらにバンド活動禁止の状態からなので、最後に文化祭で成功した時の達成感は彼らにとって何物にも代えがたいものだったのは明白です。
タイムリープ
SFのような感じですが、時間が戻って最後に別れがくることを主人公が知っていることがこの小説の特徴ですね。 避けようのない悲しい未来が近づいてくるのを、主人公視点で切なく書かれています。
「燐の病気が治るように奮闘する物語」ではなく、「燐が最後まで笑顔でいられるようにする物語」といったところでしょうか。 どこを読んでいても「最後には別れがくる」というのを常に意識させられる作品でした。
最後に
悲しいお話が苦手な方は向いていないかもしれませんが、私は切ないお話は好きなので、 個人的には面白い小説だと思います。
燐と一緒にバンド活動はできなくても、ラストは残ったメンバーでバンド活動を再開しています。 智達がどんな思いでバンド活動をしているのか色々と考えさせられる終わり方でした。
また、この物語は漫画とドラマにもなっています。
気になる方はぜひ。