歯周病とは?どんな症状?原因と治療方法まとめ
- 作成日:2018/07/23
- 更新日:2018/07/25
歯の病気の一つ「歯周病」についてまとめました。
歯周病とは
歯周病とはその名の通り、歯の周りに炎症が発生し組織が破壊されていく病気です。 最終的には歯が抜け落ちてしまいます。昔は「歯槽膿漏」と言われていました。
歯周病になる人は非常に多く、35歳以上の人で80%は歯周病またはその予備軍とみなされています。
歯の病気における2大疾患「虫歯」と「歯周病」の1つですね。
特徴
「沈黙の病気」といわれるように、自覚症状がない状態で静かに進行していき気が付きにくいのが特徴です。
初期状態では痛みも少なめであり、逆に痛みを感じた時には既に重症化している場合があります。 一般的に、治療期間は数ヶ月かかるため長期戦となります。
症状
以下のような症状がでたら歯周病を疑ってみましょう。
- 歯茎が以下のような状態にある
- 赤く腫れてきている
- 血が出てくる
- かゆい・痛い
- 歯がぐらぐらする
- 歯石がたくさんある
- 口内が粘ついている
- 歯と歯の間に隙間ができる
- 硬いものが噛みにくい
- 冷たいものなどを飲むと歯にしみる
- 出っ歯になる
このような症状に心当たりがある人は一度歯科医院で検査を受けると良いですね。
原因
歯周病の原因はお口のケアができていないためです。 日々の歯磨きで汚れが落としきれないと歯垢(プラーク)が蓄積されていき、 それが元になり歯周病となってしまいます。
砂糖を多量に摂取してもプラークが溜まるのでご注意ください。
治療方法
大前提として、重度の歯周病を元の状態に戻すことは非常に困難です。 歯周病は「治す」というより「改善していく」と表現するほうが正しいでしょう。 これ以上悪化するのを防ぐのです。
また、歯はなるべく抜かずに治療するのがベストです。 治せるのに歯を抜くという歯科医もいるので複数の歯科医の意見を聞いて比較してみると良いでしょう。
歯周病は歯科医によって腕の差が表れやすいとのことです。 また、抜歯の基準は歯科医院によって異なる可能性があるのです。
そして、歯周病の治療方法は歯周病の進行具合で異なります。
軽度の歯周病の場合
歯周病があまり進行していない軽度の場合は一般的に以下のような検査・治療をします。
- レントゲン撮影
- 歯周ポケット検査
- 基本治療
それほど大掛かりな治療はしなくて済むので、この症状で収まっていれば費用もそれほど多くはならないでしょう。
中程度や重度の歯周病の場合
こちらは歯周病がある程度進行してしまった場合です。 軽度の場合の検査・治療にプラスして以下のような治療をするケースがでてきます。
- リアルタイムPCR法
- 除菌治療
- 再生治療
- 外科治療
どの治療をするかは症状によりますが、軽度の症状の場合より総じて治療は大変になります。 場合によっては手術も必要になってくるので、費用も多くなってしまう可能性があります。
基本治療
歯周病が進んでいるいないに関係なく、まず最初に行われる治療です。この治療方法のみで対応できるならば外科治療など大掛かりな治療は不要です。
基本治療では以下のようなことをします。
- プラークコントロール
- スケーリング
- ルートプレーニング
- 歯のかみ合わせ調整
聞きなれない単語が多いですが、どれもお口を清潔に保つ治療方法です。1つずつ簡単にご紹介します。
プラークコントロール
プラークとは歯の垢のことで、口の中を垢がない状態に保つことをプラークコントロールといいます。 例えば歯ブラシやデンタルフロスなどをつかい細菌の量を減らすこともプラークコントロールの1つですね。
自宅でできるセルフケアの他に、歯科医院で行うプロフェッショナルコントロールがあります。 通常は自宅でのセルフケアですが、それだけで落としきれない汚れは歯科医院で対処します。
歯茎より上の汚れは歯磨きで、下の汚れは専門機器を使い歯科医院でやってもらいます。
スケーリング
スケーリングは歯の面についた歯石を除去する治療方法です。 超音波スケーラーというという専門的な器械を使うため、歯科医院で治療を受けます。
ルートプレーニング
手用スケーラーという器械を使い、歯根面を綺麗にする治療です。 こちらも専門的な器械を使うので自宅ではできません。
スケーリングで対処できない奥の汚れをとります。ゆえに、スケーリングと同時にやることが多いですね。
歯のかみ合わせ調整
グラグラする歯のかみ合わせ調整です。 グラグラしている状態で噛むと悪化するため、歯を削って調整します。 削っても改善されない場合は歯科用の接着剤で隣の歯と接着しグラグラを治します。
歯肉と歯の間にできた隙間(ポケット)の深さが2~3ミリならば定期メンテナンスに移行します。
リアルタイムPCR法
レントゲン撮影や歯周ポケットの検査をすれば歯周病の進行具合はわかります。 しかし、細菌に感染していた場合は何に感染しているのかまではこれらの検査ではわかりません。
そこで、感染しているものを特定するために実施するのがリアルタイムPCR法です。 感染している種類によりこの後の治療が変わるので重要な検査です。
除菌治療
歯周病は感染病なので、細菌に感染している場合は除菌が必要です。 治療方法にはFMD、3DS、光線力学療法(PDT)などがあります。
FMD(フルマウスディスインフェクション)
中程度以上に進んだ歯周病を短期的に治す治療です。
歯周病の細菌は歯から歯へ伝染するため、治療箇所が多く長期間治療していると治療後の歯から治療前の歯へ細菌が伝染してしまいます。
治療した箇所から細菌が移転する前に歯周病を完全除去する方法がFMDです。 具体的には1日もしくは数日でスケーリングやルートプレーニングをして伝染する前に細菌を潰します。
MFDの他に抗菌薬(抗生物質)を同時に飲むことで効果が上がるようです。
3DS法
FMDが歯周ポケットの除菌をするのに対して、3DS法は歯周ポケット以外(唾液中や舌など)の最近を除菌する治療方法です。
細菌は歯周ポケット以外にも潜んでいるため、除菌を徹底するには3DS法も必要になってきます。
具体的には、人工的に作成したマウスピースに除菌に効果的な薬を塗り、それを毎日一定時間口にはめて除菌します。
再生治療
歯周病によって破壊された歯周組織(歯ぐき、歯根膜、セメント質、歯槽骨)を再生する治療方法です。 主に中程度以上に進行した歯周病に対してやる治療です。
歯周病が進行して本来は抜歯しなければならないケースだとしても、再生治療で歯周組織を復活させることで、 うまくいけば抜歯をしなくて済むようになります。
再生治療には主に3つの方法があります。
GTR
再生治療の1つで歯周組織再生誘導ともいいます。 手術方式が難しいのと細菌のリスクがある治療です。
保険診療なので保険が適用される治療です。費用は1本1万5千(3割負担時)程度です。
エムドゲイン
感染リスクがなく、かつ患者の負担も少ない治療です。 手術方式もシンプルであり、再生治療ではこちらがよく使われています。
しかし、保険適用外なので自由診療となり費用が高めです。 歯科医により幅がありますが、約5万~10万円が相場です。
リグロス
平成28年に登場した新しい再生治療方法です。 エムドゲインとやり方は同じですが、組織の再生力はエムドゲインより多いと言われ、 エムドゲインに変わるものと期待されています。
ただ、登場して間もないため臨床データは少ないです。ゆえに、実績はエムドゲインのが上ですね。
費用は保険が適用される保険診療です。1本1万程度(3割負担時)です。
外科治療
基本治療をしたうえでプラークや歯石がたくさん残っている場合や、ポケットの深さが治らない場合は外科治療となります。
具体的にはフラップ手術という治療をして、プラークや歯石を除去していきます。
フラップ手術は中等度以上に進んだ歯周病に対して行う治療であり、 歯茎を切開する必要があります。
フラップ手術の注意点としては、ブラッシングが確実にできている人のみが受ける治療ということです。
ブラッシングができていない人が手術を受けると歯周病の進行スピードが約3倍になるという報告もあるため、 セルフケアが確実にできている場合のみ受けましょう。
また、手術では肉芽組織というものを削除することがあるのですが、削除していいものといけないものがあります。 これを見極められる歯科医は少ないため、手術前にわかるなら確認しておいた方が良いですね。
複数の歯科医に診てもらい、意見が一致していると安心です。
定期メンテナンス
歯周病は治療が完了しても再発の可能性が高いため、治療後も定期的な検査が必要となります。
ちなみに、口の中の細菌を除去しても歯周の細菌は3~4ヵ月で回復する傾向にあります。 よって、少なくても3カ月に1度は歯科医院に通院して専門的なケアをしてもらうと良いでしょう。
3ヶ月というメンテナンス期間は目安です。 歯の状態や通院する歯科医院により異なります。
定期的な通院は面倒かもしれませんが、放っておき悪化するとさらに面倒になるため、 治療後も油断せずにしっかりとケアしていきましょう。
通院後のセルフケア
歯科医院に通院し専門機器でお口をケアしてもらった後のセルフケアは特に重要です。
なぜなら、専門機器を用いて歯茎の掃除をした後は歯茎の溝がいつもより少し開いている状態にあるため、 歯磨きをしっかりやらないといつも以上に汚れが溜まってしまうのです。
歯周病とインプラント治療
インプラント治療を視野に入れている方は歯周病の確認は必須項目です。 なぜなら、歯周病のままインプラント治療をするとインプラント周囲炎になる可能性が非常に高いためです。 インプラント周囲炎については以下にまとめてあります。
インプラント治療をする場合は歯周病が完治するまでは絶対に受けないでください。 せっかくの高額のインプラント治療が無駄になってしまいます。
また、Mengel氏の論文によると、重度の歯周病を完治した人がインプラント治療をした場合、成功率が88%という調査結果を報告しています。(中程度の歯周病は100%成功しています。)
調査は36本(5名)のインプラント埋入をした結果です。
中程度は歯周病ポケットの深さが5ミリ以上、重度は7ミリ以上ですが、これは骨の吸収具合で評価が異なります。 骨の吸収が進んでいると歯周病ポケットの深さは5ミリ以下でも重度となる場合があるそうですね。
1/3以上骨の吸収が進んでいると中程度~重度の歯周病と見なす歯科医もいます。
調査本数が少ないのと歯科医の腕に差にもよるかもしれませんが、重度の歯周病を完治してもインプラント治療はある程度のリスクが潜んでいることをご理解下さい。
まとめ
歯周病は自分では早期に気が付かないので、歯に異常がないと思っても定期的な検査をして予防するのが最大の対策です。
もしも歯周病になってしまったら、専門の歯科医にすぐに診てもらいましょう。 場合によっては手術も必要になってくるため、放置は絶対にやめるべきです。
歯周内科とは薬を飲んで歯周病を治すことですが、 飲み薬は補助的なものなので、これだけでは治らないという意見もあるのでご注意ください。
以上、歯周病のまとめ記事でした。以下も合わせて読むと効果的です。
その他
調べる過程で気になった情報の一覧です。真偽がわからないので、いずれ調査したいと思います。
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